2011年 12月 27日
現代の社会では様々な仕事が専門職化されている。「医師」、「看護師」、「教師」、などの固有な資格や専門性を持った人々が、それぞれの場所で、そしてそれぞれの場面で各々の専門性を生かして仕事をしている。私たちはこれらの仕事の専門性を当然のこととして受け止めがちであるし、それぞれの職種がそれぞれの領分を侵すことなく、矛盾なく仕事をしていくことを期待する。
しかし、現実の生活で出くわす問題の多くが、実は複数の領域にまたがる複雑な問題である。例えば、家庭におけるネグレクトの問題は、多くの場合、単に親の人道的な問題と言うよりも、心理的な困難や経済的な逼迫、社会的な孤立を背景としている。このような場合は、医療の専門家、福祉の専門家、学校の教師、地域のコミュニティなどの様々な専門家集団、もしくは組織が協働して子どもと家族を援助していく必要がある。その折には、異なる業種間での円滑なコミュニケーションや関わるタイミングの調整などが課題となり、「専門家」は職種の境界を越えて協働していくための意識を育て、自らの経験や専門性に基づく知を共有知として生かし合うことを考えなければならない。
今後、貧困などの社会問題だけでなく、さまざまな場面で、「領域を超える」ことの大切さが実感される場面が増えるかもしれない。高度な技術を持つ科学者は、その技術をどう使うべきかを社会と照らして考えていく上で、他の領域の研究者と協働する必要があるかもしれないし、経済的な開発を推し進めようとする事業家は、その地域の文化や自然を知らなければ、大変な過ちをおかしてしまうかもしれない。これからの「働くひと」は、多角的な視点から、よりよい仕事の「場」を創りだすために、自分の専門分野を超えて、いろいろな世界に目を向け、他者と理解し合う姿勢を育てることで仕事の可能性を広げていけるのではないかと思う。
鎹先生
2011年 12月 22日
皆さんこんにちは。私は大学で生物学を専攻しています。今回は私の研究内容、および、私が研究をしている中での感想、というのをブログにしようかと思います。
私たちの脳は、圧倒的に複雑ではありますが、パソコンや携帯電話のような電気製品によく似ています。というのも、電気製品が、抵抗やトランジスタなどの部品をはんだでくっつけて合わせて作られるように、脳も神経細胞(ニューロン)という素子と、それらを繋げるシナプスという構造からなりたっているからです。
このシナプスは、ただニューロンを繋げるのではなく、様々な機能を持っていて、これに異常をきたすと様々な症状が現れます。例えば、私たちの記憶の正体は、よく使われるシナプスは強化されるという作用であると考えられています。自閉症の一因として、シナプスを作るための部品の形が遺伝的に変わっている、というものが知られています。
私は、上記のようなシナプスの機能がどのような仕組みで作られているのか、研究しています。生物の機能はタンパク質によって作られ、そのタンパク質の量や、振る舞いを調べています。具体的には、量を増減させてその影響をみたり、顕微鏡で追跡したり、振る舞いをシミュレートしてみたり…様々な方法を使い分けています。
今までの勉強と違い、研究では、誰も答えを知りません。「今やっていることは間違っていて、現在進行形で人生を棒に振っているんじゃないだろうか」と不安になることもあります。しかし、自分の持てる知識を総動員し、試行錯誤して謎を解くというのはスリリングで楽しいものです。私は生きている内に、少しでも意識の謎に迫りたいと思っています。
理系で大学に入ろうと思っている方、研究という、不安に苛まれながらも自分の実力で生きていくという世界に進むことも考えてみてはいかがでしょうか。きっと毎日が刺激的になることかと思います。
舩橋先生
2011年 11月 26日
京都、最後の村-南山城村に童仙房という集落がある。京都市内から電車を乗り継いで約二時間、大河原駅から車で山に登る。急な斜面を登りつめると目前に広がる、茶畑の連なった村の風景はジブリの舞台にでもなりそうな緑と清水の美しいところである。しかし、他の農村と同じようにこの集落でも人が減り続け、五年ほど前に小学校が廃校になった。地域の未来を危惧した村人が京都大学に相談を持ちかけたのをきっかけに、地域と大学が連携して定期的に活動・研究を展開している。
このたびの震災で私たちは先人の経験知を受け継ぐことや地域のつながりの大切さを思い知らされ、助けあうネットワークづくりや防災教育への関心も高まっている。生涯教育の研究・実践の領域でも「災害」という視点から日々の暮らしや、学びあう共同体としての地域のあり方を見直す取り組みを始めている。その第一歩として、童仙房で地域防災ワークショップを行い、昭和28年の南山城大水害を経験した方々とその時の記憶を語り合う場を持った。防災を入口にして語り合ううちに、地域の持つ課題や弱みが明らかになると共に、山間部の暮らしの自助に優れた側面の魅力も再認識された。そして何よりも、実際に災害を経験した人の記憶…音や光、そして情感豊かな語りを共有することで、災害という非日常へ向きあう心の準備ができたように思う。
鎹先生
2011年 11月 18日
試験問題は、大別すると、「論文」と「英語」で、解答時間はそれぞれ60分ずつです。
【論文】
■傾向
医学部看護学科は、アドミッション・ポリシーとして「幅広い教養と高い倫理観を持った人間性豊かな看護職者の育成」を掲げています。そのため、論文試験で問われるのは、医学に関する専門的知識だけでなく、倫理学に関する知識、さらにそうした知識への洞察です。問題は、例年二つ出題されます。第一問目は、医療や健康などについての図表読み取り問題で、与えられた図表の内容を説明し、それについての自身の意見を求められます。第二問目は、A4一、二ページ程度の文章を読み、重要概念を説明する問題(100字程度)、および自身の意見を求める問題(400字程度)です。
■対策
第一問目では、はじめに、図表が示す内容を正確に把握し、その内容を簡潔に説明する必要があります。したがって、ある程度抽象的な図表ないしグラフを分かりやすく要約できるようにしておかなければなりません。さらに、図表で扱われる内容に対して自分なりの意見を持っておくことが重要です。たとえば、「食の安全性」や「たばこが健康に及ぼす影響」などの医療や健康に関わる問題について日常的に考えたり、そのための知識を増やしたりしておきましょう。
第二問目では、問題文の内容を正確に把握し、重要概念を簡潔に説明し、さらに、それらを踏まえ自身の意見を述べる必要があります。そのため、第一問目と同様に、適切な要約能力と自身の意見をうまく展開できる論理能力を磨いておかなければなりません。したがって、対策としては、総合的な教養を扱う書籍(新書など)を読んだり、その内容をまとめたりして、自身の教養を深めておきましょう。
さらに、医学的・倫理的な問題に関する重要概念(たとえば、インフォームド・コンセント、脳死、尊厳死、介護など)をあらかじめ学習して対策しましょう。
【英語】
■傾向
英語試験の問題は、例年二つ出題されます。出題傾向に関しては、年によってばらつきがありますが、第一、第二問目ともに、A4一、二ページ程度の医療や健康に関する英文を読み、重要概念を説明する問題、もしくは英文の該当箇所を和訳する問題が中心です。
■対策
第一、第二問目ともに、文法的には比較的易しく、基本的な英文法を理解しておくことが求められます。とはいえ、和訳問題にうまく解答できるように、自然な日本語に和訳できるような対策をしておくことが重要です。さらに、医療や健康についての内容を扱う英文が多いので、そうした英文を理解するためにある程度専門的な語彙、言い回しの知識を持っておかなければなりません。そのため、英語で書かれた、医療や健康についての入門的な内容のテクストを読んだり、医療や健康に関する英単語を学習したりしておくことが望ましいでしょう。
また、論文試験への対策でも触れたように、医学的・倫理的な問題に関する重要概念を整理しておくことは、英語試験でも大いに役立ちます。ですので、日常的にこうした問題について考えたり、他の人々と議論したりしておくことを強くお勧めします。
2011年 11月 16日
東日本大震災が発生して、半年以上が過ぎた。地震をきっかけに原子力発電の安全性に関する国民的な議論が日々行われている。
次世代の電源開発の研究に従事するものとして、その議論のなかで気になることがある。影響力(発信力)をもつ人々による無責任な発言である。多くの有名人が脱原発、廃炉の意見を発信している。しかし、果たしてその中に、論拠を示して発言している者はどれだけいるか。私が見る限りでごく少数である。
電力会社による原発の「安全」は、今回の事故で嘘だと証明された。その事実だけで声高々に意見を述べるに足る十分な理由だと錯覚するほど、今回の原発事故は十分に大きく、無視できるものでない。だが一方で、今夏の大規模な節電令で熱中症による死亡者が大幅に増加したのも事実である。出力が不安定な太陽光発電などの自然エネルギーが原発の代替電源になり得ないのも事実である。電力系統の安定度など技術的な問題、設備増加による経済的な問題、核の平和利用主導の放棄など、問題は多々ある。この問題点は議論せず、ただ危険だから廃炉という意見はあまりにも無責任でナンセンスである。バックグラウンドをしっかりと知った上での発言がこれからは必要だと思う。
もちろん、これは私たちのような次世代電源を研究する者が、正しい情報を発信する努力があってこその話である。
甲斐先生