キリスト教絵画

投稿者: | 2013 年 7 月 19 日

 キリスト教絵画に対して皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか? 最も多くの人が思い浮かべるキリスト教絵画は,レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》かもしれません。近年人気を博した,ダン・ブラウンの著作《ダ・ヴィンチ・コード》で謎解きの大きな鍵を握っていたのもこの作品でした。しかしこうした人気の一方で,キリスト教絵画全般に対しては,基本的に堅苦しいイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
 中世において宗教画は,聖書の内容を人々に伝えるという教育的な役割を果たしていました。というのも,当時ほとんどの民衆は,文字を読むことができなかったからです。今となっては美術館に収められてしまった宗教画のほとんどは,もともとは教会に飾られ,聖書を読んだことのない人にも分かりやすいような形で描かれました。例えば,洗礼者ヨハネという人物は,必ずと言っていいほど,動物の毛皮を身にまとい,柄の長い十字架を手にした姿で描かれます。この出でたちは,荒野において修行をしていた彼が,途中で動物の亡骸から毛皮を取り,柄の長い十字架を地面に刺しそれに向かって祈りを捧げていたというエピソードに基づいています。宗教画に描かれた人物は,それぞれにこうした独自のエピソードを持っているため,その内容にまつわるゆかりの品とともに描かれることとなります。なので,それぞれの持ち物を知ることでわたしたちは彼らが聖書におけるどの人物なのかを特定することができ,さらに人物が特定できたあかつきには,その絵画に描かれた場面をも知ることができます。こうした人物や場面に関する知識は,なにも聖書そのものを紐解かなくとも,図版の付いた解説書を読むことで,簡単に身に付けることができます。
 日本で本格的なキリスト教会絵画を目にする機会はあまりないかもしれませんが,海外の美術館などで宗教画を見つけたときには,是非素通りをせずに,解説書を片手に立ち止まってみることをおすすめします。ダン・ブラウンの本のように,壮大な推理物語を思い描かなくとも,手軽に謎解きを楽しむことができるでしょう。

福間先生