私は大学院で、社会学を専攻しています。文系で大学院入試や編入試験を考えているみなさんは、「こんな何の役に立つかよくわからないものを専攻していいのだろうか」と考えることもあるかもしれません。私自身も大学院を受けるときは悩みました。
社会学について言えば、確かに「役に立たない」学問だと言われることも多いですが、そうではなく「すぐに」「物質的に」役に立たないだけだと考えるようになりました。たとえば世の中の生きづらさ、息の詰まるような感じを説明し、社会の規範に対して距離をとった見方を提示することで、人の気持ちをわずかにでも楽にすることがある。また、社会問題を新しい角度から見ることで、新しい解決策の発見につながるかもしれない。このように考えて研究を行っている学者は多いように感じます。
私自身の研究は、富や貧しさについて人々がどう考えてきたのか、ということをテーマにしています。小さい時から「どうやって稼ぐか」ということを考えていかなければならない時代ですが、日本にはかつて「貧しい方が幸せである」「欲があるのはよくない」という考え方が根強くありましたし、今でもその一部は残っています。それを補助線として現代を見ることで、「お金を得なければ」「そのために頑張って働かなければ」というプレッシャーから少し楽になることはできればいいな、ということを考えながら研究をしています。
研究の方法は、言説分析といって文字になった資料などを読み込んでいくことが中心ですが、インタビューをしたりデータを集めたりということも行います。昔の資料を集めるために図書館をめぐったり、旧字体の本を読んだり、計算をしながらデータを読み込んだりと面倒だけれども面白いと思えるようなことが多いです。研究室など環境も整うので、学部のよりもずっと勉強が楽しいと思うようになりました。
大学院では試験勉強とはまた違った面白さが見つかると思うので、それに向かって今の勉強を頑張っていただけたら幸いです。
伊藤先生
