この度の大震災で多くの方が被災され、連日の報道に胸が痛む日々です。今、私たちに何ができるのか?いかに生きていくのか?が試される時と思います。地震からおよそ3週間が経過した今、少しずつ報道されていることとして、現地では心のケアの必要性が叫ばれています。そうした心のケアを臨床心理学で具体的に災害時の危機介入と呼びます。今回、そうした震災に関する話題を提供したいと思います。
被災者の一般的な心理的な反応として、理論では主に4つの時期を辿ると言われています。災害直後の茫然自失期、ハネムーン期、幻滅期、再建期です。茫然自失期は、恐怖体験のために無感覚、感情が欠如しやすい状態となる時期で、自分や家族の人々の命や財産を守るために危険をかえりみない行動が出てくる可能性があると言われています。ハネムーン期は、被災者同士の強い連帯感が形成され、援助に希望を託して助け合う時期です。幻滅期は、復旧に入る頃に被災者の忍耐が限界に達して、援助の遅れや行政の失策への不満が噴出しやすい時期です。やり場のない怒りに駆られトラブルが多くなると言われています。再建期は、生活のめどがたち始め、生活の再建への自信が向上していく時期です。依然、フラッシュバック(強いトラウマ体験を受けた場合に、後になってその記憶が、突然かつ非常に鮮明に思い出されたり、同様に夢に見たりする現象)は起こりますが、徐々に回復していくと言われています。ただ、再建期でも復興から取り残されたり、精神的支えを失った人にはストレスの多い生活が続くと言われています。これらの心理的な経過を考慮しながら、支援者は接していく必要があると言われています。
震災後の心理援助の3原則としては、富永良喜先生(兵庫教育大学)と高橋哲先生(芦屋生活心理学研究所所長)のコメントを添付します。
1.継続してケアできない心理援助者は被災者への直接関与をしてはいけない。援助する時は現地の対人援助者と一緒にすること。
2.恐怖の感情表現を促すこと(地震の絵や作文を書かせること)は安全感のない空間(継続してケアできない人、災害直後)では二次被害を与える。
3.トラウマのアンケートのみを実施することは二次被害を与える。必ず継続して関与できる人がトラウマと喪失の心理教育とストレスマネジメント体験を同時に行い、個別相談体制を整えたのちに実施すること。
震災へのボランティア活動を行うためには、事前の勉強会を受けたのち、共通した対応のもとチームで行っていくことが重視されます。1人1人ができることは限られていますが、それがチームとなり大勢の人が協力体制をとることで、やがて大きな力になると信じています。再建期まで末長く支援していけるように被災者の方へ関心を向け続けていくことも必要だと思います。
細見先生
