展覧会に足を運んだり、画集を読んだり、美術品を扱ったテレビ番組を見るのが好き、という人は案外多いかもしれません。季節も「芸術の秋」真っ只中、ということで、今回は洋の東西を問わず美術史を学ぶ際に必要なことをお伝えしたいと思います。
まず、美術史はなによりも絵画・彫刻・工芸・写真など「モノ」を扱い、その歴史的な位置づけや重要性、役割などを研究していく学問です。そのため、作品など「モノ」を見ることが好きでなくてはいけません。しかし、ただ漫然と見るだけではなく、かなり意識的に「観察する」ことが求められます。「神は細部に宿る」といわれるように、作品のとても些細なところに作者の特徴が表れていたりするのです。なので、美術史を学ぶために必要なことは、第一に「観察力」であるといえるでしょう。
次に、観察した作品の特徴をより際立たせるために、同じ作者の他の作品や、違う作者でも同じような作品との比較作業を行わなければなりません。そこで、重要になってくるのが、きちんと作品を「分析」できるかどうかということです。作品の特徴を明らかにするためには、作品どうしを比較して両者の類似点や相違点を指摘できるかどうかこの「分析力」にかかってくるというわけです。
さらに、美術史といえども、ただモノだけを観察し、分析していればいいというわけでもありません。関連する文献を読み、制作された当時の社会状況を知り、さらには制作者本人の人柄なども知らなければならないのです。つまり、歴史学や文化史、社会学、心理学など多様な学問領域を横断し、議論を「構築」することが必要になってくるのです。
このように、美術史を学ぶにはいろいろな力が必要になってくるわけですが、しかし芸術作品が好き、ということが基本だと思います。現在、一年のなかでも目玉となるような展覧会が様々な美術館・博物館で開催中です。今まであまり興味がなかった方もぜひ足を運んでみて下さい。
熊倉先生
