レオナルド・ダ・ヴィンチとヨーロッパの古代

投稿者: | 2012 年 6 月 6 日

私の専門は西洋古代史ですが、ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチとヨーロッパの古代のことについて少し書いてみたいと思います。

レオナルド・ダ・ヴィンチの名前は有名ですが、現存する作品はルーヴル美術館のモナリザやミラノの最後の晩餐など、20点程度に過ぎません。しかし、ダ・ヴィンチは膨大な量のノートを残しており、そのうち約3分の2は失われたといわれてますが、それでもイタリア、フランス、イギリス、スペインなどの図書館、博物館に合わせて数千ページのノートが残されています。そのなかには絵画論、人体や動物の筋肉、動きなどについての研究、飛行機などの発明のアイデア、といった様々な内容が含まれています。

これらのノートのなかには、古代のギリシア人やローマ人が使っていた槍や剣などのデッサンが残されています。ダ・ヴィンチは兵器開発の参考のためにこれらのデッサンを残したのでしょうが、ギリシア人やローマ人の武器だけでなく、ゲルマン人やケルト人など、可能な限り網羅的に調べてあり、どうやら彼はヨーロッパの古代のことについて相当関心を持っていたようです。

ちなみに、ダ・ヴィンチのノートのなかには、ラテン語を勉強した跡も残されており、動詞の活用や基本的な単語を何度も書き写しています。ルネサンスの天才レオナルド・ダ・ヴィンチでも、ラテン語の勉強に関しては、私のような凡人同様にそれなりに苦労していた様子を見ると、今までよりも親しみを感じられるようになりました。

疋田先生