危機言語ロマンシュ語

投稿者: | 2013 年 1 月 25 日

こんにちは。みなさんはロマンシュ語という言語を知っていますか。多くの人は知らないと思います。私も大学院で言語学に携わるまで、この言語について知りませんでした。この言語は極端に話者が少なく、ヨーロッパ連合及びスイス政府によって近いうちに消えていく言語(危機言語)に指定されています。今日は、みなさんにはロマンシュ語を通して、それに付随する問題について少しでも考えて頂ければ幸いです。

ロマンシュ語とは、スイスの公用語の一つです。スイスでは、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の四つの言語が公用語として法の下で制定されています。四つの言語の人口の割合は、前の文章で示した通り、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の順に多いです。ドイツ語の話者が一番多く、スイスの人口に対して約三分の二ほどですが、ロマンシュ語の話者はスイスの人口に対して1パーセントもいません。

さらに、ドイツ語はスイス国内のみではなく、ドイツやオーストリアなどで話されていますが、ロマンシュ語はスイス国内で話されているのみで、他の国では全く話されていません。ロマンシュ語の総人口は5、6万人で、話者の多くが60歳以上と高齢なので、近い将来に消え失われる言語であるとされています。

言語が失われることで、どのような問題があるのでしょうか。大きく分けると、二つの考え方があります。一つ目は、言語は自然と生まれ自然と消えていくものであるから、人為的に守っていく必要はないという考え方です。他方、言語は固有の文化と強く結び付いているため、私たちがその文化の多様性を失わないために、人為的に守っていく必要があるという考え方です。

私は後者の考え方に基づき、ロマンシュ語を後世に少しでも残していきたいと考えています。私は世界中のみんながメジャー言語(英語、中国語、スペイン語)のみを話す世の中なんてつまらないと思うからです。前の文章で少し触れたように、言語は固有の文化と強く結び付いているため、その人の行動様式にも影響を与えます。したがって、みんながみんな同じ言語を話すことによって、単一で個性のない世界になってしまうのではないかと考えています。みなさんはどう思いますか。

坂口先生