経済と自然を調和させていく研究を目指して

投稿者: | 2014 年 6 月 26 日

 私の専門は経済学と財政学です。大学生の間は主に経済学一般を学んでおり、財政学に目覚めたのは大学院に入ってからでした。私の関心は、一般的な財政学を取り扱う国家の財政問題よりも地方の財政と経済の問題でした。「中央」政府の保護の下にあった日本の「地方」は、経済のグローバル化の進展に伴って、従来の財政・経済システムが崩れて、独自の主体的な取り組みが求められていると考えています。
このような動きを、「地方分権」として捉えるのか、あるいは「地域主権」として捉えるのか議論が分かれるところです。前者はあくまでも中央と地方の関係を念頭に置いて、中央から地方へ権限を分け与えるという見方で、後者は「地方」という受け身的な存在としてではなく、「地域」という独立した存在として位置付けて、そこに主権があるという見方です。残念ながら、「地域主権」と呼べるほど自立的な地域は日本では数が少なく、やはり、中央政府から様々な支援を受けることに慣れてしまっているのが実情です。
しかしながら、国から言われて行動するだけでは、もはや自分たちの地域の問題解決にはつながらないと考え始めている地域は増えてきています。最近では全国各地で地域再生に向けた、住民自身の様々な取り組みがクローズアップされてきています。その中で特に注目するのが、自然と経済を結びつけている事例が増えてきていることです。荒廃した自然の再生と衰退した地域産業の再生をセットに考えられ始めているのです。里山資本主義という言葉も生まれました。
経済学は基本的に経済と自然を分けて考えてきましたが、近年の環境問題や持続可能性の問題に表れているように、単に自然を外部の現象としては言い切れないほど密接に結びついています。このことに注目して発展してきたのが、エコロジー経済学という学問領域です。自然を単なる資源や外部環境としてみなすのではなく、生態系が経済を包み込んでいるという認識に立っているところが特徴です。
経済学や財政学は近代社会の発展と共に誕生した由緒ある学問ですが、このように、新しい事象がどんどん生じてくると、その学問領域も発展していきます。そのホットな領域で私は研究をしています。
荒木先生