研究とは、疑問を持つことから始まる

投稿者: | 2011 年 8 月 13 日

「何を研究されているんですか」と聞かれて、「心理学について研究しています」と言うと、相手の方から「じゃあ人の心が読めるんですね!」と言われることがよくあります。しかし、こうした心理学(もしくは心理学者)のイメージは実際の心理学の研究とはかなりかけ離れたものです。多くの心理学者は人の心を読むことに特に優れているわけではないし、むしろ読めないからこそ研究をしているのではないでしょうか。

私自身、大学院で研究を始めて、もう7、8年ほど続けていますが、未だに人の心が読めるようになったわけではありません。むしろ、知れば知るほど、次々と新しい疑問が湧いてきます。しかし、実はこの「疑問を持つ」ということが大学院で研究をする上でもっとも大切なことです。何故なら、研究とは「問題や疑問に対して自分なりの考えを導いていく過程」だからです。

この過程について私自身の研究テーマを例として説明しましょう。私の場合は、「どんな人物の顔が記憶に残りやすいのか」というのが最初の疑問でした。この疑問を出発点として、もう少し疑問を具体的に考えていくと、例えば「魅力的な顔とそうでない顔では記憶のされ方が違うか」や、「顔の表情によって記憶のされ方に違いはあるのか」といった様々な疑問が生まれてきます。こうした疑問に対して、実験や調査を行うことによってデータを集め、その結果に基づいて自分なりの考えをまとめていきます。もちろん、実験や調査を行う上では様々な能力が必要なわけで、それを磨くことも必要なわけですが、まず自分の問題意識(「何に興味を持っているのか」「何が分からないのか」「何を知りたいのか」「何故その研究をしたいのか」ということ)を明確にすることが研究を行う上で最も重要な点だと思います。自分の問題意識を明確にすることは一朝一夕でできることではなく、時間のかかる作業です。しかし、その作業を通じてしっかり考えることで、大学院入試の面接でも自分の研究についての考えをきちんと伝えることができるし、大学院に入ってからも良い研究をすることができるはずです。

そのためには、常日頃から様々な物事に対して興味を持ち、自分なりに考えてみる、あるいは疑問を持つ習慣を付けることが大切だと思います。

中嶋先生