経済学の定義、経済学的に考える。

投稿者: | 2011 年 9 月 17 日

  よくテレビや雑誌で「お洒落の経済学」、「恋愛の経済学」といったように「~の経済学」というものを目にします。ところでどのように分析されれば経済学といっていいのでしょうか?今日は、経済学の定義を紹介することを通して経済学の本質について軽くふれてみたいと思います。
   経済学の定義を考える際に社会科学の学問分類を参照すると理解しやすいでしょう。おそらくみなさんがすぐに思いつくのは、広く経済現象を扱うのが「経済学」、企業経営を扱うのが「経営学」、主に流通・企業間取引関係を扱うのが「商学」、政治を扱うのが「政治学」、法律を扱うのが「法律学」というものでしょう。このような分類方法は各学問分野を扱う対象によって規定しています。
このような分類方法は多くの人が同意する方法であり、各分野の性格をよく掴んでいるでしょう。しかしながら一方でこれとは異なる分類方法もあります。それは、方法論によって、分析アプローチによって各分野を規定するというものです。ここでは経済学的アプローチに焦点を当てます。
   まず経済学の教科書(ミクロ経済学の入門書)でよく紹介される経済学の定義は、ロビンズの「希少資源の配分の選択を分析する選択の科学」というものです。ここで希少資源とは現代経済学的には”有限”の選択肢と考えられます。例えば空気のように無料でいくらでも手に入るものについてはどれだけ吸いたいかなど考える必要はありません。一方でお金、時間、体力・気力などは”有限量”しか使えません。例えば一日に使える時間が”有限”ということは何かに一時間使えばその分他の全ての選択肢について一時間使えなくなっているということを意味します。このような選択肢間の関係を「トレード・オフ関係」と言います。もちろん大前提として選択肢が”複数”ある状況を考えています。このように経済学は人々が複数のトレード・オフ関係にある選択肢のなかでどのような意思決定をするのか(べきか)ということに焦点を当てています。このように経済学は対象が何であれ意志決定プロセスに焦点を当てるという分析アプローチです。
   このことをふまえると経済学的に考えるということはどいうことでしょうか?それは、社会現象や人々の行動について「インセンティブ」に着目し、行動の背後にある意思決定プロセスを考察するということです。インセンティブとは人々の行動の動機のことです。人々が行動する(=ある選択肢を実際に選ぶ)のはそれに動機がある(他の選択肢を選ばないだけの動機がある)からです。つまり、人々の行動とはその人の置かれた環境のもとで、その人の価値観に即して良かれと思って”選択した結果”であると考えるわけです。ですので何か社会で問題があるとしたら、安易に「一人一人が~を心がけましょう」といった精神論に解決の糸口を求めません。むしろ、誘導したい選択にインセンティブを与えることに解決の糸口を求めます。
 こうして考えていくと、巷に見られる株や為替の話の多くは経済学的アプローチをしている印象はありません。むしろ、恋愛や友人関係、就職活動、といった身近な話題の方が案外経済学的アプローチがなされている気がします。みなさんも雑誌などで評論を見たらそれがどれだけ経済学的アプローチがなされているか考えて見て下さい。

新宅先生