原発事故に思うこと

投稿者: | 2011 年 11 月 16 日

東日本大震災が発生して、半年以上が過ぎた。地震をきっかけに原子力発電の安全性に関する国民的な議論が日々行われている。
次世代の電源開発の研究に従事するものとして、その議論のなかで気になることがある。影響力(発信力)をもつ人々による無責任な発言である。多くの有名人が脱原発、廃炉の意見を発信している。しかし、果たしてその中に、論拠を示して発言している者はどれだけいるか。私が見る限りでごく少数である。
電力会社による原発の「安全」は、今回の事故で嘘だと証明された。その事実だけで声高々に意見を述べるに足る十分な理由だと錯覚するほど、今回の原発事故は十分に大きく、無視できるものでない。だが一方で、今夏の大規模な節電令で熱中症による死亡者が大幅に増加したのも事実である。出力が不安定な太陽光発電などの自然エネルギーが原発の代替電源になり得ないのも事実である。電力系統の安定度など技術的な問題、設備増加による経済的な問題、核の平和利用主導の放棄など、問題は多々ある。この問題点は議論せず、ただ危険だから廃炉という意見はあまりにも無責任でナンセンスである。バックグラウンドをしっかりと知った上での発言がこれからは必要だと思う。
もちろん、これは私たちのような次世代電源を研究する者が、正しい情報を発信する努力があってこその話である。

甲斐先生