新型インフルエンザ

投稿者: | 2012 年 9 月 8 日

致死率五割を上回る感染症が蔓延する可能性が出てきた。これは少し言い過ぎではあるが、危険が広まっているのは事実である。

高病原性鳥インフルエンザとして知られるH5N1は、感染者の半数以上が亡くなっているが、基本的には、感染した鳥に接触しなければ大丈夫であると考えられてきた。しかし、世界的に有名な科学雑誌において衝撃的な論文が発表された。H5N1に数か所の遺伝子変異を加えることによって哺乳「間」での感染能力を獲得した。鳥から哺乳類への感染ではなく、哺乳類から哺乳類への感染能力を獲得したという事実は脅威となる。

この論文が公開に至るまでには相当な議論があり、バイオテロへの悪用を恐れて公開を禁止する動きもあった。最終的には公開されたが、この判断が正しかったか否かは、近い将来に評価されるであろう。確かに、悪用された場合は大きな脅威となるが、そもそも、人工的に遺伝子変異を入れて作成できたということは、確率は極めて低いものの、自然界でも発生し得るということである。万が一発生した場合に、対応策があるか否かで相当数の人命が左右される。有効なワクチン開発のためにも、今回の公開は必要であったと考えられる。しかし今後の研究の進捗に依存する部分が大きいため、注目していきたい。

中野先生