京都府立大学 文学部 編入学 傾向と対策

投稿者: | 2016 年 9 月 16 日

京都府立大学 文学部 史学科 3年次 編入学 小論文(歴史)

【傾向】
京都府立大学文学部史学科の編入学試験における小論文試験は歴史学範囲のテーマに係わる論述問題が出題される。近年は短文のテーマ文が四題程度出題され、そこから二題を選び別紙に自由に論述する形式が続いている。問題文の内訳は日本史二題・中国を中心とする東洋史一題・西洋史一題が一般的だが、平成15年度・同28年度にはオリエント・イスラーム地域の出題が西洋史を代替している。また、平成27年度「1492年の意義」のような広い視野を必要とする「世界史」的出題がなされた年もある。
日本史分野では先史時代を除き、古代から現代まで幅広い時代の出題が見られる。特定の事件や人物などに関するものよりある一定の年代幅の中で政治・経済・文化・国際交流などを解答する総合的な問題が大部分を占める。同一の時代からは出題されないが、時代毎の頻度にパターンは見られない。古代史は大化前代の出題も目立つが、考古学分野での出題は見られない。また、平成26年度・平成28年度には従来稀だった戦後史が出題されており、注意を要しよう。
東洋史分野は時代別では先史・新中国以降の現代は見られないものの、古代から近代まで幅広く出題される。地域面では中国以外の地域からの出題は見られないが、遊牧民との関わりや周辺国との関係を問う出題も多い。また「科挙」(平成16・21年度)や「歴史書」(平成15年度)などテーマ史的出題も多く中国史・中国思想への教養が問われる年度も多い。日本史と同じく考古学範囲での出題は前例がない。
西洋史分野では古代史分野が出題はあまりないが、中世~近代で出題が見られる。近代史の出題頻度が高く、ことに近代イギリス史は頻出であるのが特筆される。アメリカ史は前例がなく、戦後史の出題は見られない。なお、既述の通り西洋史のみ他分野で代替されることや、「英中関係」(平成23年度)や「中東の植民地支配」(平成26年度)のように他領域との関係性が問われることもあり、視野を広く保ちたい。

【対策】
まず三分野とも自由論述なので、知識面もさることながら論述の訓練をしたい。日本史・世界史の高校教科書や中央公論・講談社などの「日本の歴史」・「世界の歴史」シリーズなどで知識の確認や補完を行いつつ、実際に記述してみよう。また、実は京都府立大学文学部史学科一般入試後期の地歴科論述試験と傾向が大変似通っており、余裕があれば参照してもよいだろう。
日本史は特に手の込んだ出題は見られず、大学受験様のオーソドックスな問題が多いが、前近代史では文化史の出題も目立つので、苦手な人は大学受験レベルでよいのでそれへの対策もしておきたい。また、古代・中世などのおおまかな年代観だけではなく、細かい時代毎の制度の変遷なども頭に入れておきたい。
東洋史は時代毎の一般的な出題に加えて、テーマ史的出題も目立つ。例えば科挙であれば宮崎市定『科挙』、遊牧民と中国王朝の関係であれば杉山正明『モンゴル帝国の興亡』のように啓蒙書などの助けを借りることも考えたい。また、平成26年度のように思想史の出題もありうるので、諸子百家や歴史書編纂などの思想や学術についてまとめておくと安心だろう。清朝末期の政治改革など近代史への目配りも忘れないようにしたい。
西洋史分野は日・東と比べて出題分野に顕著な偏りがある。複数回出題されたイギリス近代史・産業革命への目配りをするなど各国史での対策は不可欠だが、それと同等以上に近代を中心とする欧州列強の関係・中国や中近東への植民地支配など関係性を問われる出題も多い。国際関係論の本も活用するなど、近代欧州の複雑な国際関係を抑えつつ、古代~近代の通史的な大学受験レベルの知識の補完にも努めたい。
最後に、京都府立大学史学科には日・東・西各分野で専門研究のみならず、啓蒙書なども執筆し学界をリードする教員が多くいる。教員著作を読むのは迂遠のように見えて、編入学の格好の対策にもなろう。

鈴木先生